よみたい万葉集 対談 【後編】この本は万葉集のお勝手口です

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04.「わたしの歌」をみつける楽しみ

万葉集の歌を読んでいると、鳥肌がたつことがあるそうです。
それが一期一会、自分だけの「別格歌」に出会えた瞬間。
自分の好きな歌人に出会えると万葉集の世界がぐっと身近に感じられるかも。

───それではいよいよ、三人の好きな歌人、別格歌のこと教えてください。

はな:私は山部赤人さんの歌なんですけど、、

春の野に すみれ摘みにと 来し我そ 野をなつかしみ 一夜寝にける
(春の野にすみれを摘もうと来た私は、野に心惹かれて一夜眠ってしまった)

はな:パンチがあるわけでもないけど、あっいいなぁって。
お花とか、派手なものとかいっぱいあるのに、その中でもすみれを選んだっていうのが胸キュンポイントで‥
それから私は赤人さん派なんです♡

ゆうり:寝過ごしちゃった、寝ちゃったっていうとこが。

はな:気づいたら寝ちゃった、っていうところが可愛い。。

───そんなところで寝てたら風邪ひきそうですね(笑)では、あやさんは

あや:もっちゃん(大伴家持)ですよね、
もっちゃんはユーモアがあるとかしつこいとか変わってるとか、、
そういう歌が本当に多いんですけど、これは万葉集のなかでも最後の方の歌で、、、

我がやどの いささ群竹 吹く風の 音のかそけき この夕かも
(わが家のわずかな群竹に、吹きゆく風の音がかすかに聞こえる この夕暮れよ)

───美しい歌ですね。。

あや:美しいんです。ユーモア系のもっちゃんの歌がある中に、栄えるというか。
これはなんていうか、見えないけれども聞こえる歌なんですよね。
家の中に居るから外は見えないのに、笹の音で風が吹いてることを感じたっていう、、
あのもっちゃんがこんな繊細な感性を持ってたんだってとこに萌えました~

ゆうり:もっちゃんの妄想かもしれないよ。

あや:いや、鳴ったんだって。笹が鳴ったんだって。
そういう感性を持ち合わせてる所にどっぷり恋に落ちたわけですね。はい。

───あやさんのもっちゃん愛がすごいです。そういえば今日のお着物も、、

あや:そう!群竹なんですよ。
これ、ゆうりちゃんが見つけてくれたんですよ。帯も。
もっちゃんセレクトです(笑)

───(笑)最後、ゆうりちゃんお願いします。

ゆうり:これは、一番最初にぱーっと恋に落ちた歌で、、、

天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ
(天の海に雲の波は立ち、月の船が星の林に漕ぎ隠れゆくのが見える)

ゆうり:人さま(柿本人麻呂)の歌です。
見えてくる景色がたった31文字なのに見た事無い景色だったんですよね。
詠んでいる言葉も海、雲、星、月、船とか普段何気なく使う名詞ばっかりなのに。
それがこんなふうに組合わさっただけで、全然違う景色を見せてくれたのがすごくびっくりして。

───字並びがすごいですよね、これ

ゆうり:そうなんです、名詞と動詞だけなんですよね、この歌を構成してるのが。
形容詞とかが一切ないのが潔くて好きだなって。
この景色がどうみえたのはこっちに全部ゆだねられてるところが、読む方の気持ちをより自由に、好きにいさせてもらえたな、って。
歌でこんな世界がみれるんだったら、もっといろんな歌を読んでみたいなって思ったんです。

───村田先生も人麻呂は別格だとおしゃってましたね。

ゆうり:万葉集読んでると、キラーンて光ってるなって思うのは柿本人麻呂ばっかりで。
言葉尻というか、強さがあるというか、とりあえず人麻呂が気になるなって。

───みなさん、別格歌の話になると熱いです!

ゆうり:愛が。

あや:別格に関しては(笑)

はな:恋してるもん。

 

05.この本は万葉集のお勝手口です

村田先生のあとがきに書いてありましたが、「よみたい万葉集」は万葉集のお勝手口です。
最後に、お三方に「よみたい万葉集」の楽しみ方を伺いました。

ゆうり:詩集と同じと思ってもらうと良いかも。
好きなテーマから読んでみてもいいし、ぱらぱらめくって気になったイラストのページを読んでもいい。
万葉新聞とか小ネタから入っても読みやすいと思います。

───万葉新聞の中にも歌がいっぱいあるから、案外その歌が良かったとかありましたよ。

ゆうり:対談で入れられなかった歌を全部そこに入れましたから!

あや:ゆうりちゃんのすべての人麻呂愛を詰め込んだページもあるよね(笑)

ゆうり:気づいてほしいな。9割くらい人麻呂のページあるの。

───ゆうりさんの人さま愛、、、暴走するのでストップしときます(笑)

はな:私は「表紙が可愛い!なんだろ!?」で手に取ってもらって。
読んでみたらいつの間にか万葉集にはまってる!!が理想です。
読者がそれぞれに自由な楽しみ方を見つけて、万葉集に参加してもらいたいです。

あや:万葉集の歌を読んでいるとキュンとくる瞬間があるんです。
そうした私たちの心が動いたポイントをしっかりと本に盛り込んでます♪
万葉集ってとっつきにくいイメージがありますが、まず楽しいんだよ、素敵なんだよ。
ということを、本を通じて感じてもらえればと思います。

ゆうり:歌は当時の人の気持ちをギュッと圧縮したものだと思っています。
この本をきっかけに歌に目を留めてもらって、読者の方それぞれに楽しんでもらえたら。

───今日はありがとうございました。今週末からの展示楽しみにしてます。

対談は脱線ばかりでしたが、、、笑い声の絶えない楽しい時間でした。
3人のお話を聞いてると、万葉集の世界がとても身近に感じられるから不思議です。
ぜひ「歌をいろどる原画展」会期中に、3人に会いにSo-Raへご来店ください。

※対談の臨場感をお伝えする為、出来るだけ内容を修正せず記載しています。
本来の万葉集の内容と異なる点がありますが、3人の著者の個性を感じてもらえたらと思ってます。
尚、 So-Raの対談記事はすべて、So-Ra店主の責任編集でございます!

 

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